ソボジロ

セミリタイア後の日常考

節約のために何を売り渡しているかを考える

生活費を考えるとき、「何に金を使わないか」よりも、「何に金を使うべきか」を考えたほうがいい。節約はすればするほどハマるゲームのようなもので、些細な節約のために生活時間や快適さを売り渡してしまうものだから。

《そこそこやりくりすれば、年間五千ポンド(七〇万円)で生活するのはきわめて簡単だった。家賃を差しひいても、だ。ところが、お金を一切使えないとなったとたん、さまざまな問題が生じてくる。普通ならちょっとした買い物ですむことが、気の遠くなるような大仕事になってしまう。週五〇ポンドの薄給で暮らしているとして、ペンが書けなくなったとしよう。ペンなんて買えば安いものだ。誰だって、近くの店に駆けこんで二五ペンス出せば新しいのを買える。しかし、お金を使わないとなると話は別だ。ペンが信じられないほど安くたって、五ペンス値引きされたって、この際関係なし。お金がなければ買えないだけだ。国内の最低賃金換算で二分間の労働に等しい額を支払う代わりに、一日の四分の三の時間を費やしてキノコから新しいペンを作らなければならない。これが、倹約生活とカネなし生活のちがいである。この現実にはすっかり肝をつぶしてしまった。》

「僕はお金を使わずに生きることにした」マーク・ボイル